在タイ日本人向け:ソディウム税と減塩の今
タイのソディウム税とソルトメーター構想:タイの減塩ネットワークが描く未来
タイ料理って本当においしいけれど、どうしても“しょっぱさ”は気になりますよね。そんなタイで今、「塩分のとりすぎ」を本気で減らしていこうという動きが加速しています。減塩を推進するネットワーク「เครือข่ายลดบริโภคเค็ม」が、第24回全国健康会議(CDoH)で発表した内容から、タイのソディウム税構想とSalt Meter(塩分測定器)の全国導入プランを、タイ在住目線でわかりやすくまとめます。
タイのNCDと塩分過多の現状
「เครือข่ายลดบริโภคเค็ม」のประธานである รศ.นพ.สุรศักดิ์ กันตชูเวสศิริ によると、タイでは塩分・ソディウムのとりすぎが原因とされる非感染性疾患(NCDs)が、急激に増えているとされています。特に問題になっているのが、高血圧、心臓・血管の病気、脳卒中、慢性腎臓病といった病気で、いずれも日常生活に大きな影響を与えやすい疾患ばかりです。
国民のソディウム摂取量は、平均で1日3,650ミリグラムと報告されていて、これは推奨量2,000ミリグラム/日のほぼ2倍にあたります。塩分のとりすぎは大人だけの問題ではなく、10~19歳の子ども・若者の約10%が高血圧の基準に入っているとされ、以前の約9.4%からさらに増加していることも示されています。
食生活の中では、インスタント食品やスナック菓子が大きな要因の一つとされています。20歳以上のタイ人は、インスタントラーメンを男性で平均22g/日、女性で14g/日摂取しているというデータがあり、スナック菓子も男性32g/日、女性29g/日と、日常的に取り入れられている様子がうかがえます。こうした「Packaged food(包装食品)」は、加工・調理・製造されたうえで密閉包装されるもので、インスタント麺、カップ粥、塩味の強いスナックなどが例として挙げられています。
タイ政府はこれまでも、食に関するリテラシー向上などの啓発キャンペーンを続けてきましたが、「キャンペーンだけでは新規患者数、とくに子どもやティーンエイジャーの増加を減らすことはできない」との分析も示されています。既に病気を持つ人の進行を遅らせる効果はあっても、新たな患者を減らすには不十分という見方で、ここから次のステップとして「法的な対策」が注目されています。
ภาษีโซเดียม(ソディウム税)とは?甘さに続く“塩分版”の税制構想
世界保健機関(WHO)の提言も踏まえ、タイでは「お願いベースの協力」から、「法的な枠組みをともなう対策」へとシフトする必要があるとされています。その中核にあるのが、ภาษีโซเดียม(Sodium Tax)、いわゆるソディウム税や“塩分税”の構想です。
このソディウム税は、ソディウム量の多い商品に段階的な税率をかけていく「アダプタ(階段)式」の仕組みが検討されており、「甘さ」に対して導入されている税制と似た考え方と説明されています。現時点で対象として想定されているのは、ソディウム量が多い商品、とくにバーミー・ギュン・サムルップ(インスタントラーメン)やスナック菓子、そしてソースや調味料などです。なかでも、メインターゲットはインスタントラーメンとスナック菓子とされています。
ผศ.ดร.พจนา หันจางสิทธิ์ の研究では、このソディウム税と「塩分を減らしたレシピへの変更」を組み合わせた場合の影響が試算されています。スナック菓子とインスタントラーメンの塩分を減らし、「Healthier Choice(より健康的な選択)」のシンボルの基準にあわせたレシピへ調整すると、高血圧患者を合計で85,000人以上減らせる可能性があるとされました。その内訳は、男性で約54,000人、女性で約31,000人と試算されていて、とくに45~49歳以上の年代に効果が大きいとされています。
この税制は、単に税収を増やすことを目的にするというより、「ソディウムが多い食品は健康リスクが高い」というシグナルを社会に発信し、商品レシピやサービスの変化を促す役割を期待されています。実際、バーミー・ギュン・サムルップのような商品は、税をかけると低所得層に直接的な経済負担がかかる一方で、価格が上がることで「ご飯や他の炭水化物にシフトする傾向が出てくる」との分析も示されています。スナック菓子については「生活必需品ではない」ため、最も税の対象にしやすい種類の商品として挙げられています。
価格の力で“子どもの塩分依存”を防ぐねらい
เครือข่ายลดบริโภคเค็ม の議論では、特に「子どもが小さいうちから塩分の強い味に慣れすぎないようにする」ことが重視されています。そこで、Packaged foodのような加工・包装食品、とくに塩味の強いインスタント麺やスナック菓子に対して、税制を通じて“価格の壁”をつくる発想が示されています。
調査では、ソディウムを多く含む食品、とくにインスタントラーメンとスナック菓子は価格に対する需要の変化が大きく、値段が上がると消費量が有意に減る傾向があるとされています。つまり、税によって価格が上がれば、子どもや若い世代の「しょっぱい味への依存」をある程度予防できる可能性があるという見方です。
一方で、調味料については、税をかけても使用量があまり減らない可能性が指摘されています。その場合、消費者の財布からお金が出ていくだけになりやすいため、慎重な設計が必要とされています。そこで提案されているのが、一定量以下のソディウムなら税をかけない「最低ライン(Threshold)」を設け、それ以上の“かなりしょっぱい”商品にだけ、ソディウム量に応じて税率を上げていく「Progressive Sodium Tax(ソディウム累進税)」の考え方です。
減塩を支える新ツール:塩代替品とSalt Meter 2万台構想
ソディウム税だけでなく、より広く減塩を進めるためのツールづくりも進められています。เครือข่ายลดบริโภคเค็ม の รศ.นพ.สุรศักดิ์ は、今後2~5年のうちに、塩の代替となる調味原料(塩代替品)が広がっていく見込みを語っています。同じく2~5年のスパンで、「Salt Meter(塩分測定器)」を全国のコミュニティに2万台配置する計画も示されており、地域レベルで料理や食品の“しょっぱさ”を見える化していく構想です。
さらに、タイでは食品ごとの「ソディウム基準値(Sodium Benchmark)」を定める取り組みも進められています。これは各カテゴリーの食品ごとに目標となるソディウム量を設定し、食品業界がその基準を参考にレシピを徐々に変えていけるようにするためのものです。一気に味を変えるのではなく、長期的な目標のもとで少しずつソディウム量を下げていくことで、消費者が「味が落ちた」と感じにくいように配慮しながら、減塩を進めるねらいがあります。
これらの動きは、国民の健康を長期的に守るための「食環境づくり」として位置づけられています。ソディウム税のような法的な措置に加え、減塩レシピへの改革(Reformulation)、健康的な選択を示すラベル表示、そして継続的な情報発信を組み合わせることで、「ลดเค็ม ลดโรค(塩分を減らして、病気も減らす)」社会をめざしているのが特徴です。
タイ社会がめざす“減塩・減病”の方向性
第24回全国健康会議(CDoH)のスローガンは「หวาน เค็ม เมา ควัน—กับดักสินค้าทำลายสุขภาพเรื้อรัง」とされており、甘さ・塩分・アルコール・煙(タバコ)など、慢性疾患を引き起こしやすい商品が「わな」のように私たちの生活に入り込んでいることへの警鐘が込められています。塩分だけを切り取るのではなく、「甘い・しょっぱい・酔う・煙」という4つの要素を、まとめて健康リスクとしてとらえているのが今のタイらしいところです。
一方で、ผศ.ดร.ปภัศร ชัยวัฒน์ は、ソディウム税の設計を誤ると低所得者層に過度の負担をかけてしまうリスクも指摘しています。そのため、ソディウム累進税のように「しょっぱさに応じて税率を上げる」ことや、低価格帯の商品を扱う中小の事業者に対して、レシピ変更をサポートする仕組みを組み合わせることが提案されています。これにより、減塩を進めつつも、弱い立場の消費者に過大な負担を負わせないようにする狙いがあります。
また、ソディウム税と並行して、「Tax and Non-Tax(税・非税)」両面の政策を使い分けることも重要だとされています。つまり、税制だけに頼らず、レシピの改善、ラベル表示、教育・広報といった非税の施策も総動員して、社会全体で減塩を後押ししていく方向性です。今回の討論の場は、こうした科学的根拠にもとづいた政策提言をまとめ、「ลดเค็ม ลดโรค」を持続可能な形で進めていくためのステップとして位置づけられています。
まとめ
タイでは今、ソディウム摂取量が推奨の約2倍という現状を受けて、高血圧や心血管疾患、脳卒中、慢性腎臓病などのNCD対策として、本格的な減塩政策が動き出しています。インスタントラーメンやスナック菓子などを対象にしたภาษีโซเดียม(ソディウム税)、食品ごとのソディウム基準値づくり、Healthier Choiceの基準に沿ったレシピ改革、そして2~5年で2万台導入が見込まれているSalt Meterなど、アプローチは多方面にわたります。
啓発キャンペーンだけでは減らしきれなかった新規患者、とくに子どもや若者の高血圧を抑えるために、タイは「価格の力」と「環境づくり」を組み合わせた新しいフェーズに入りつつあります。タイに住む私たち日本人にとっても、日々の食卓の“しょっぱさ”を見直すヒントとして、こうした動きを意識しておきたいですね。
よくある質問(FAQ)
Q1. タイで塩分過多と関連して問題視されている病気は何ですか?
A1. 非感染性疾患(NCDs)の中でも、特に高血圧、心臓および血管の病気、脳卒中、慢性腎臓病が、塩分・ソディウムの過剰摂取と関連して増加しているとされています。
Q2. タイ人の平均的なソディウム摂取量と推奨量はどのくらいですか?
A2. タイ人の平均ソディウム摂取量は1日約3,650ミリグラムとされており、推奨量の2,000ミリグラム/日のほぼ2倍にあたります。
Q3. ภาษีโซเดียม(ソディウム税)の対象として想定されている商品は何ですか?
A3. ソディウム量の多い商品が対象で、具体的にはバーミー・ギュン・サムルップ(インスタントラーメン)、スナック菓子、ソースや調味料などが挙げられています。とくにインスタントラーメンとスナック菓子が主要なターゲットとされています。
Q4. 減塩政策によってどの程度、高血圧患者が減ると見込まれていますか?
A4. ソディウム税と、スナック菓子やインスタントラーメンの塩分を「Healthier Choice」の基準に合わせて減らすレシピ変更を組み合わせた場合、高血圧患者が合計で85,000人以上減少する可能性があると試算されています。そのうち、男性で約54,000人、女性で約31,000人が減ると見込まれ、とくに45~49歳以上の年代への影響が大きいとされています。
Q5. Salt Meterや塩代替品はどのように導入される予定ですか?
A5. 今後2~5年のうちに、塩代替品が広く利用されるようになること、そして同じく2~5年の期間で、Salt Meter(塩分測定器)を全国のコミュニティに2万台配置する構想が示されています。これにより、地域レベルで料理や食品の“しょっぱさ”を見える化し、減塩を後押しすることが期待されています。
参照元:ไอเวิร์คพีอาร์
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