在タイ日本人必読:医療費増で変わる民間病院と保険
タイの医療費はGDPより速く成長中:民間病院と健康保険に広がるチャンス
タイの医療費が、経済成長(GDP)よりも速いペースで増えているのを知っていますか。高齢化と医療テクノロジーの進化を背景に、公的医療だけでは支えきれない時代が近づきつつあります。
その一方で、民間病院や民間の健康保険には、長期的な成長チャンスが生まれてきています。タイに住む日本人としても、医療の「お金の流れ」がどう変わっていくのかを押さえておくと安心感が違います。
タイの医療費はGDPを上回るペースで拡大
タイの医療関連支出は、今後もかなりしっかり伸びていくと見られています。予測では、2032年まで年間平均4〜7%のペースで増加するとされていて、これはタイ経済(GDP)の成長を上回るスピードです。背景にあるのは、まさに「高齢化」と「医療テクノロジーの高度化」という、避けて通れない2つのトレンドです。
医療費の重さは、GDPに占める割合からもはっきり分かります。タイの医療費の対GDP比は、2000年には3.08%だったところ、2023年には4.54%まで上昇しました。これだけでも、医療が国の経済構造の中でどんどん存在感を増してきたことが読み取れます。タイの金融グループであるKKP(キアットナキンパットラ)傘下の証券会社は、こうした流れを「タイの医療・ヘルスケア産業が構造的な転換点に入りつつある兆し」と分析しています。
2030年に迫る財政制約と公的医療から民間へのシフト
とはいえ、この成長を今のように「ほぼ国の負担」に頼り続けるのは難しくなりつつあります。現在、タイ政府は国全体の医療費の約78%を負担しており、税収ベースから見るとかなり重い水準です。高齢化に伴って社会保障費が増えていくなかで、財政の余裕(いわゆるFiscal Space)はどんどん狭まっています。
さらに、タイの法律では「毎年の国家予算のうち、少なくとも20%を投資的経費(インフラなど)に確保しなければならない」というルールがあります。この制約があるため、2030年頃には財政の限界がよりはっきり表面化し、政府は福祉関連の支出を抑えざるを得ないと見込まれています。その結果として、医療費の一部を民間へ「シフト」していく方向性が強まると予想されています。
タイの全民皆保険(ユニバーサル・カバレッジ)制度は、大きく手を加えるのが難しい制度ですが、財政の制約から、年間約4,500億〜5,000億バーツという公的な医療費の一部が、民間側に移っていく可能性があります。その規模は、追加分だけでも1,000億バーツ超と試算され、これは上場している民間病院グループ全体の現在の売上高の約40%に相当するインパクトとされています。
民間病院に追い風:人材不足と高まる医療ニーズ
こうした構造変化は、民間病院にとっては長期的な追い風になりやすい状況です。公的にカバーしきれない部分が増えるほど、民間病院の役割は大きくなり、タイ国内の患者だけでなく、より複雑な疾患や高度な治療ニーズを抱えた層も流れ込んでくると想定されます。
医療人材の面でもポイントがあります。タイでは2015〜2024年の間に、医療従事者の数は2倍以上に増えていますが、それでも人口あたりの医師数は多くの国の基準と比べて低い水準にあります。つまり、「医師・医療リソースの不足」と「病気の複雑化による医療需要の増加」が同時に進んでいる状態です。このミスマッチが続く限り、民間病院はある程度の価格決定力(プライシングパワー)を維持しやすいと分析されています。
投資家から見た民間病院セクターの魅力
投資目線で見ると、民間病院株には「構造成長+割安感」という組み合わせが意識されています。KKP系の証券会社によると、タイの上場民間病院グループ全体は、2026年予想ベースの株価収益率(P/E)が約19倍で取引されており、地域平均のおよそ30倍と比べると低めの水準にあります。
また、セクター全体の利益はすでに2024年の第2四半期でボトムをつけ、年後半にかけて回復していくと見られています。なかでも、より複雑で高度な医療ニーズに応えられる体制を持つ大手株として、BDMSとBHがこのトレンドの恩恵を受けやすいと評価されています。短期・長期の両方で、医療需要の質的変化を取り込めるポジションにあると見なされている点が特徴です。
タイの健康保険市場:低い加入率と高い成長ポテンシャル
公的負担が限界に近づく一方で、民間の健康保険市場にも大きな伸びしろが見込まれています。医療費そのものが上がれば、「いざという時に備えたい」というニーズは自然に強まり、民間保険への関心も高まります。
現状、タイで民間の健康保険に加入している人は、人口の約6.4%にとどまっています。これは、OECD諸国の平均加入率36%と比べるとかなり低い水準です。その一方で、タイの医療保険料収入は2019〜2025年のあいだ、年平均約8%というペースで伸びているとされています。まだ加入率は低いのに、市場規模は着実に拡大している段階です。
今後もし、民間の医療保険料に対する税制優遇(控除枠)の拡大や、医療費の一部を自己負担する「コーペイメント(共同負担)」のような仕組みが広がれば、民間保険の役割はさらに増す可能性があります。こうした政策面の後押しが入れば、健康保険市場は今以上に成長の余地があると考えられています。
まとめ
タイでは、高齢化と医療テクノロジーの高度化を背景に、医療費がGDPを上回るペースで増え続けています。医療費の対GDP比は2000年の3.08%から2023年には4.54%へと上昇し、すでに政府が医療費全体の78%を負担している状況です。このままでは、2030年頃にかけて財政的な限界がより明確になり、公的医療だけで今の水準を維持するのは難しくなっていくと見られています。
その結果、公的医療から民間病院や民間の健康保険へのシフトが進み、年間4,500億〜5,000億バーツ規模の公的医療費の一部が民間側に移る可能性があります。この流れは、医師不足と高度医療ニーズの高まりと相まって、民間病院の価格決定力と収益性を支えやすい環境をつくり、BDMSやBHといった大手病院株にも注目が集まっています。同時に、加入率6.4%とまだまだ伸びしろの大きい民間健康保険市場も、医療費の上昇と制度設計次第で、さらなる成長が期待される分野です。
よくある質問(FAQ)
Q1. タイの医療費は今後どのくらいのペースで増えると見込まれていますか?
A1. 2032年まで、タイの医療費は年間平均4〜7%のペースで拡大すると予測されています。これはタイ経済(GDP)の成長率を上回る水準です。
Q2. なぜタイ政府の医療費負担が問題になっているのですか?
A2. 現在、政府が国全体の医療費の約78%を負担しており、税収に対して非常に重い水準になっています。さらに、予算の少なくとも20%を投資に回すという法律上の制約もあり、2030年頃には財政の余裕が一段と限られると見込まれているためです。
Q3. 公的医療費の一部が民間にシフトすると、民間病院にはどのくらいのインパクトがありますか?
A3. 全民皆保険などにかかる年間約4,500億〜5,000億バーツの公的医療費の一部が民間に移るとされ、その追加分は1,000億バーツ超になる可能性があります。これは、上場民間病院グループの現在の売上高のおよそ40%に相当する規模と試算されています。
Q4. タイの民間健康保険の加入率はどの程度で、どんな成長トレンドがありますか?
A4. タイの民間健康保険の加入率は人口の約6.4%で、OECD諸国の平均36%と比べてかなり低い水準です。ただし、2019〜2025年の間に健康保険の保険料収入は年平均約8%で伸びており、市場は拡大傾向にあります。
Q5. 投資の観点から注目されているタイの民間病院株はありますか?
A5. KKP系の証券会社は、タイの民間病院セクター全体が2026年予想P/E19倍と地域平均30倍に比べて割安としつつ、複雑な医療ニーズに対応できる大手としてBDMSとBHを、短期・長期の両面で恩恵を受けやすい銘柄と評価しています。
参照元:บริษัทหลักทรัพย์ เกียรตินาคินภัทร จำกัด (มหาชน) / KKP
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