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AI ライター

タイ在住日本人向け チュラロンコン病院の認知デイケア

チュラロンコン病院「ศูนย์ฝึกสมอง」のデイケアで、高齢者の認知機能をやさしく刺激

年齢とともに「2階に上がってきたのに、何をしに来たんだっけ?」「メガネどこに置いたか思い出せない」なんてこと、誰にでもありますよね。タイでも高齢化が進む中で、こうした物忘れと「認知症」の境目に不安を感じているご家族は少なくありません。

タイ赤十字のチュラロンコン病院には、高齢者の認知機能を刺激し、認知症の進行をゆるやかにすることを目指した「ศูนย์ฝึกสมอง(Cognitive Fitness Center)」があり、デイケア形式でさまざまな活動を行っています。ここでは、その内容と、センター長のรองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์ เหมรัญชโรจน์医師が語る認知症・予防のポイントをまとめます。

チュラロンコン病院・ศูนย์ฝึกสมอง(Cognitive Fitness Center)とは

ศูนย์ฝึกสมอง(Cognitive Fitness Center)は、チュラロンコン病院・タイ赤十字内に設立された「脳トレーニングセンター」です。目的は、高齢者の認知機能を刺激し、認知症の発症や進行をできるだけゆるやかにしつつ、心と体のケアを行うこと。すでに認知機能の低下が始まっている人が、脳の変化とうまく付き合いながら、できるだけ自立して、家族とともに穏やかに暮らしていけるようサポートしています。

รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์ เหมรัญชโรจน์医師は「一部の認知症は、病気の種類によっては良くなる可能性もあるが、アルツハイマー型など、止めることができないタイプもある。その場合でも、進行を遅らせ、本人と家族の生活への影響を少なくし、どの段階でも“幸せに暮らせること”を大事にしている」と語っています。

センターでは、教科書的な知識や国際的な実践方法をタイの生活文化に合わせて応用し、実際の生活の中で役立つ形に落とし込むことを重視しています。

ศูนย์ฝึกสมองは、病院内のอาคารสธ.7階に位置し、デイケア(Day Care)形式で運営されています。月曜〜金曜の9:00〜14:30に開所し、午前に2つ、午後に1つ、1週間で合計15種類の活動が組まれています。

さらにこのセンターは、単なるデイケアにとどまらず、認知症を遅らせるための新しいサービスやツールを開発する「研究開発拠点(R&D)」という側面も持っています。

グループ活動としての音楽療法や手工芸などを工夫するだけでなく、ศูนย์ความเป็นเลิศด้านนวัตกรรมดิจิทัลและปัญญาประดิษฐ์เพื่อการแพทย์ด้านจิตเวช(AIMET)、ศูนย์เทคโนโลยีอิเล็กทรอนิกส์และคอมพิวเตอร์แห่งชาติ(NECTEC)と連携し、デジタル技術・AIを活用した脳トレゲームや、脳波を使った集中トレーニング、体を動かしながらゲームをするExergameなども取り入れています。

また、認知症の進行度を把握するための脳機能テストも、国際的な基準に基づきつつ、タイ人の生活背景に合うように調整されたものが用意されており、各段階の変化を分かりやすく確認できるよう工夫されています。

デイケアで行われている多彩な脳トレ・活動内容

ศูนย์ฝึกสมองのデイケアでは、1日3つの活動を組み合わせて、楽しみながら脳を刺激するプログラムが用意されています。内容は週15種類とバラエティ豊かで、高齢者一人ひとりのペースに合わせて参加できるよう配慮されています。

特に人気なのが「歌のクラス」。รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師によると、音楽は高齢者の気分を明るくし、みんなで一緒に脳を使うよいきっかけになるそうです。講師がうまくリードすることで、アルツハイマー型認知症の方でも、歌を通じてクラスに戻ってきて、一緒に参加しやすくなるというエピソードも紹介されています。

歌以外にも、ボードゲーム、ヨガ、アートや手工芸など、多彩な活動が行われています。ヨガはAbsolute Yogaからの講師、歌の活動も外部の先生が担当するなど、院内スタッフと外部講師が連携してプログラムを運営しています。

グループ活動でありながら、それぞれの高齢者に合わせて内容や関わり方を調整しているのも特徴です。人と会ったり活動したりするのが好きな方には、積極的にグループ参加を勧める一方で、人付き合いが得意でない方や、通院が負担になる方には、自宅でできる方法をアドバイスしたり、家族や介護者がセンターで活動内容を学び、自宅で続けられるように支援したりしています。遠方の方には、自宅近くで似たような運動や活動ができる場所を紹介することもあります。

さらにこのセンターでは、高齢者向けの活動だけでなく、一般の人を対象とした認知症に関する啓発イベントや、脳のトレーニング方法を学べるプログラムも実施されており、広く「脳の健康」への理解を深める役割も担っています。

認知症とその段階、Mild Cognitive Impairment(MCI)とは

日常のちょっとした物忘れと、病気としての「認知症」はどこが違うのでしょうか。รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師は、「これまで普通にできていた日常の決まった行動を忘れる」「仕事の役割をうまくこなせなくなる」「“覚えておこう”と思ったことを繰り返し忘れる」といった変化が出てきたら、認知症の初期、あるいは「認知機能低下の状態」のサインと説明しています。

認知症とは、脳の働きが低下することで、考える力、記憶力、言葉の使い方などに問題が出て、日常生活に支障をきたす状態を指します。รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師の推計では、タイ国内で診断を受けている認知症の人は少なくとも80万人、すべての重症度を含めると100万人ほどにのぼるとされています。

原因は一つではなく、パーキンソン病、水頭症(脳室内に水がたまる状態)、脳の血管が詰まる病気など、さまざまな背景から起こります。そのうち約80%はアルツハイマー病によるものとされており、血管性の認知症など一部は治療によって状態が良くなる可能性がある一方で、アルツハイマー型は完治は難しく、進行を遅らせるアプローチが中心になります。

アルツハイマー病の背景としては、遺伝的要因、頭部外傷、糖尿病、高血圧、脂質異常症などが挙げられています。ただし、同じ糖尿病でもアルツハイマー病になる人もいれば、ならない人もいるなど、同じ要因に対する感受性は人によって異なり、複数の要因が組み合わさって発症すると説明されています。

認知症の3つの段階とMCI

รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師によると、認知症は大きく3つの段階に分けられます。

初期の段階では、周囲の人にもはっきり分かるような物忘れが目立ち始めます。以前は自分でこなせていた、難易度の高い責任ある仕事(たとえば税金の申告など)が、うまく管理できなくなっていきます。

中期になると、食事や入浴といった日常生活上の基本的な行動を忘れるようになり、家族など周囲の人がこまめに声をかけて促す必要が出てきます。

後期になると、身近な家族や孫の顔が分からなくなったり、自分がどこにいるのか分からず混乱したり、「ここは自分の家ではない」と感じてしまったりすることがあります。トイレの使い方さえ分からなくなる人もいて、ほぼ24時間の見守りが必要になります。

その一方で、認知症に至る前の段階として「Mild Cognitive Impairment(MCI:軽度認知障害)」と呼ばれる状態があります。これはまだ認知症とまではいえないものの、「以前より明らかに物忘れが増えた」「責任ある役割や業務をうまくこなせなくなった」といったサインが見られる状態で、一般の人に比べて将来認知症になるリスクが約10倍高いとされています。

生活習慣と認知症リスク、家庭で気づきたいサイン

รองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師は、高齢期に入ったら「認知症になりにくい生活」を意識しておくことが大切だと話します。リスクを高める行動として挙げているのは、自己管理をしないこと、運動不足、肥満、血管の病気や糖尿病、高血圧、脂質異常症といった慢性疾患の放置、日常生活であまり脳を使わないこと、不眠、ストレスなどです。

予防の考え方は、心臓病の予防とよく似ています。食生活と気分の安定に気を配り、適度に運動し、きれいな空気を吸い、脳もしっかり動かすこと。ここでいう「脳を使う」は、ただ寝転んでドラマを観たり、チャットアプリだけを眺めて過ごすのではなく、自分が楽しめる形で考えたり工夫したりする活動です。1日7,000〜9,000歩ほど歩くこと、人と会って交流すること、そして何より「ストレスをためすぎないこと」が重要なポイントとして挙げられています。

とはいえ、認知症は生活習慣だけでコントロールできるものではありません。大きな要因の一つとして、もともとの遺伝的なリスクが関わっており、自分の内側にどれくらいリスクを抱えているかは分からないとしています。そのうえで、「私たちにできるのは、自分でコントロールできる範囲をできるだけ大切にすること」とメッセージを送っています。

家庭で高齢者を見守る家族にとっては、「年相応の物忘れ」と「認知症のサイン」の違いを意識しておくことも大切です。何度も注意したのに、覚えていてほしいことを繰り返し忘れてしまう、長年使い慣れていたはずの携帯電話が急に使えなくなる、外出を嫌がる、周囲の出来事に興味を示さない、温厚だった性格がイライラしやすく攻撃的になる——こうした変化が見られた場合、受診を検討するきっかけになります。

受診の結果、感情や気分の病気が見つかる場合もありますが、その中の半数以上は認知症を併せ持っていることが多く、気分の病気の背景に認知症が隠れているケースもあるとされています。そのため、気になる変化があれば、一度医療機関で評価を受ける方が安心といえます。

そして、もし認知症と診断されたとしても、「“脳が衰える”という言葉に過度におびえる必要はない」とรองศาสตราจารย์ ดร.พญ.โสฬพัทธ์医師は強調します。大切なのは、状況を受け止めながら、できるだけストレスを減らして暮らすこと。睡眠の質を整え、適度な運動を取り入れ、食生活を見直すなど、できる範囲で生活を調整していくことが、本人と家族の穏やかな毎日につながります。

まとめ

チュラロンコン病院のศูนย์ฝึกสมอง(Cognitive Fitness Center)は、高齢者の認知機能をやさしく刺激し、認知症の発症や進行を少しでもゆるやかにすることをめざしたデイケアセンターです。歌やボードゲーム、ヨガ、アートなどの楽しい活動に加え、デジタル技術を活用したゲームや脳波トレーニングなども取り入れ、本人のペースや性格に合わせて「その人らしく暮らし続けること」を支えています。

認知症はタイでも100万人規模の人が抱えるテーマであり、加齢、生活習慣、遺伝など複数の要因が絡み合って起こります。完全に防ぐことは難しくても、日々の生活でできることを少しずつ積み重ねること、早めにサインに気づいて専門家と一緒に対応を考えることが、本人と家族のQOL(生活の質)を守るうえで大きな助けになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. チュラロンコン病院のศูนย์ฝึกสมองは、どんな目的で運営されていますか?

A1. 高齢者の認知機能を刺激し、認知症の発症や進行をゆるやかにすること、心と体のケアを通じて、認知機能が低下してもできるだけ自立して、家族とともに幸せに生活できるよう支援することを目的としています。また、認知症に関する研究開発や啓発活動も行っています。

Q2. デイケアはいつ、どのような形で利用できますか?

A2. ศูนย์ฝึกสมองはデイケア形式で、月曜から金曜の9:00〜14:30まで開所しています。午前に2つ、午後に1つの活動があり、1週間で合計15種類のプログラムが組まれています。

Q3. どのような活動で脳を刺激しているのですか?

A3. 高齢者に特に人気なのは歌の活動で、音楽に合わせて楽しく脳を使うクラスです。そのほか、ボードゲーム、ヨガ、アートや手工芸などがあり、病院スタッフに加えAbsolute Yogaなど外部の講師も参加して指導しています。

Q4. 認知症の主な原因と、アルツハイマー病の位置づけは?

A4. 認知症は、パーキンソン病、水頭症、脳血管の詰まりなど、さまざまな原因から起こります。そのうち約80%がアルツハイマー病によるもので、血管性認知症など一部は良くなる可能性がある一方で、アルツハイマー型は完治は難しく、進行を遅らせることが主な目標とされています。

Q5. 家族が「受診した方がいいかも」と考えるべきサインには何がありますか?

A5. これまでできていた日常行動を繰り返し忘れる、何度注意しても覚えてくれない、長年使ってきた携帯電話が使えなくなる、外出や周囲のことへの興味が薄れる、性格が優しかった人が怒りっぽく攻撃的になる、といった変化が見られる場合は、年相応の物忘れではなく認知症や感情の病気が隠れている可能性があり、一度医療機関での評価を受けることが勧められています。

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